主たる債務者兼保証人と消滅時効

2013-09-13

先週の新聞は,嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする民法900条4号ただし書きに関する最高裁の違憲判決のニュースで持ちきりでした。

この問題は,私も以前ブログで取り上げたことがあり(http://bigcircle.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-2d52.html),また,今回の最高裁判決では,違憲判決の効力についての補足意見も付されるなど(違憲判決の効力についても,ブログで取り上げたことがありました。http://bigcircle.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-229b.html),大変興味深いものですが,なにぶん,最高裁判決の分析が十分できていないため,この判決を取り上げるのは次の機会に譲ろうかと思います。

さて,今回取り上げるのは,主債務者が死亡し,保証人が主債務者を相続した場合に,保証債務の弁済が消滅時効の完成に影響を与えるかという点が争いとなった事件です(最高裁平成25年9月13日判決)。

親子間,あるいは配偶者間で,異なる法的地位に立つ二人がいる場合,一方の死亡によって他方が相続人となると,二つの異なる法的地位が,同一人に帰属するということが起こりえます。例えば,子どもが親に借金をしている状態で親が亡くなり子が相続した場合,債権者という親の法的地位と,債務者という子の法的地位が同一人である子のもとで帰属することになります。この場合には,その子は債権者かつ債務者となったわけで,原則として親が子に対して有していた貸金債権は混同により消滅することになります。

今回取り上げる判例のケースは,親が主債務者で,子が連帯保証人のケースです。事案は代位弁済などが絡んでやや複雑ですが,ごく簡略化すると,金融機関が親に金を貸したところ,親が亡くなり,子が単独でその親を相続した,その後,その子は,連帯保証契約の履行として,いくらか弁済をしたが,払えなくなったので,金融機関は訴えを提起したというものです。

この訴訟において,その子は,主たる債務が時効消滅しているとして連帯保証人としてこれを援用するとともに,連帯保証債務についても時効消滅しているとしてこれを援用しました。それに対して,金融機関は,連帯保証人として弁済していたのであるから,債務の承認として,主債務について時効中断の効力が生じると反論していました。

東京高等裁判所は,金融機関の時効中断の再抗弁を排斥して,主債務は時効消滅しているというこの主張を認めました。

本件では,子に,主債務者としての地位と,保証人としての地位が併存していることが問題なわけですが,さらに問題を複雑化する事情として,時効中断の相対効と,保証債務の附従性という問題があります。
時効中断の相対効とは,「時効の中断は,その中断の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ,その効力を有する。」(民法148条)という原則です。つまり,時効中断の効力は,他者に影響を与えないということです。他方で,保証債務の附従性というのは,保証債務は主たる債務の履行を担保することを目的としたものであるから,主たる債務が有効に存続することを前提とするという保証債務の性質のことです。つまり,保証債務は主債務に従属するということです。

時効中断の効力は相対的である半面,保証債務は主債務に附従する,これらは一見相反する内容に思われるので,議論が難しくなっているわけです。保証債務の附従性はあくまで保証債務が主債務に附従するもので,逆ではない。主債務と保証債務は別個の債務であるから,保証人が保証債務を「主たる債務」の時効完成前に一部履行したとしても,これによって保証債務の消滅時効が中断する(保証債務の承認にあたる)ことがあったとしても,これにより「主たる債務」の消滅時効が中断するわけではない。従って,保証人は依然としてその後に完成した「主たる債務」の消滅時効を援用できる,というのが,今までの議論の到達点だったように思います(私の手元にあるスタンダードなテキストにはそのように書いてあります。)。

これに対して,最高裁は,次のように判示し,主たる債務が時効により中断していると判断しました。

「…主たる債務者兼保証人の地位にある者が主たる債務を相続したことを知りながらした弁済は,これが保証債務の弁済であっても,債権者に対し,併せて負担している主たる債務の承認を表示することを包含するものといえる。これは,主たる債務者兼保証人の地位にある個人が,主たる債務者としての地位と保証人としての地位により異なる行動をすることは,想定し難いからである。したがって,保証人が主たる債務を相続したことを知りながら保証債務の弁済をした場合,当該弁済は,特段の事情のない限り,主たる債務者による承認として当該主たる債務の消滅時効を中断する効力を有すると解するのが相当である。」

保証人兼主債務者なんだから,保証債務の履行であっても,債権者に対しては,主債務の承認を表示しているのだ,というのが,最高裁の判断ですね。
そして,あくまで,時効中断が生じたのは主債務であるが,「主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は,保証人に対しても,その効力を生ずる。」という民法457条1項により,連帯保証債務についても時効中断が生じていると結論付けたわけです。

なんだかパズルみたいな複雑な論点ですが,最高裁のシンプルな判決を読むと,やけにスッキリ頭に入ってくるように感じるのは気のせいでしょうか。昨夜,元最高裁調査官の講演にて,調査官や最高裁判事の仕事がいかに激務で大変であるというお話を伺ったからかもしれません。

 

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(hy)

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