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有価証券報告書の虚偽記載

2018-11-21

有価証券報告書の虚偽記載に関して,当事務所弁護士のコメントがニュースに掲載されました。関心がある方は是非お読みください。

https://www.bengo4.com/c_1009/n_8887/

 

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(hy)

事業承継税制(特例措置)

2018-11-13

中小企業の経営者にとって,事業承継は一大問題であると思います。

誰を後継者とすべきか,後継者の育成と従業員の教育,技術やノウハウの伝承,取引先に対する説明など,円滑な事業承継のためには必要なことは山ほどあるでしょうが,経営者を悩ます一つとして税金の問題があるでしょう。

中小企業の経営者が保有する自社の非上場株式についての相続税,贈与税の猶予及び免除については,すでに平成21年度に事業承継税制において措置が取られていますが(いわゆる一般措置),平成30年度には,いわば新・事業承継税制というべき特例措置が実現しています。

この事業承継税制(特例措置)は,事業の後継者が平成30年1月1日から平成39年12月31日までの間に,先代の経営者からの相続又は贈与により,都道府県知事の認定を受けた非上場会社の株式等取得した場合,その株式等に係る相続税・贈与税の納税が猶予又は免除される制度です。手続上,一般措置と異なる点は,会社が「特例承継計画」を作成し,平成35年3月31日までに都道府県知事に提出し,確認を受ける必要があるという点です。

以下,事業承継税制(特例措置)の要点をいくつか説明いたします。まず,「特例承継計画」の作成・提出が必要となります。「計画」といっても,詳細なものが要求されているわけではなく,後継者(一般措置と異なり3名まで可)の氏名,事業承継の予定時期,承継時までの経営見通し,承継後5年間の事業計画などをA4 2枚程度にまとめ「確認申請書」として提出するという,比較的簡単なものとされています。ただし,内容については認定経営革新等支援機関の指導・助言を得る必要があります。この特例承継計画は相続・贈与の後でも提出することができます。

申告期限後5年間は事業を継続する必要がありますが,一般措置と異なり,雇用要件は極めて弾力化されています。

事業の継続ができないなど確定事由に該当すれば,猶予がストップし全額納付となります。5年経過後も株式の保有等を継続すれば,そのまま納税猶予され,後継者が死亡したなどの場合には,猶予税額が免除されます。

典型的な一例としては,会社が特例承継計画を策定し,都道府県知事の確認,認定を受け,その後,初代経営者が株式を二代目経営者に贈与し,贈与税の申告をし,贈与税の納税猶予が適用を受ける。そのまま事業を継続し,初代経営者が死亡すると,贈与税の猶予税額が免除される半面,相続税の課税が発生しますが,都道府県知事の切替確認を受けた上相続税を申告し,相続税の納税猶予の適用を受ける。さらに事業継続をし,三代目経営者に贈与し,都道府県知事の認定を受けて贈与税を申告,贈与税の納税猶予の適用を受ける。といった流れが考えられます。もちろん,各々の段階において,細かい要件を満たす必要はあります。

事業承継税制(特例措置)は,相続時精算課税制度と併用することも可能です。その場合には,贈与税の納税猶予の適用が取り消された場合に高額納税となるというリスクをヘッジすることができることになります。

また,猶予税額の全部又は一部を納付することになった場合であっても利子税の負担軽減措置が設けられるなど,中小企業の経営者の税負担に配慮した内容となっていますので,事業承継を考える経営者のみなさんには,特例承継計画の策定,提出を勧めます。当事務所にご相談,ご利用いただければと思います。もちろん,事業承継の目的は円滑な事業の承継の成功であって,節税ばかりに目を向け経営がないがしろになっては本末転倒ではありますが。この点は,税務大学校の教授も力説されておりました。

なお,今回は,非上場会社の事業承継を取り上げましたが,個人事業者の事業承継税制については,本年平成31年度の税制改革で議論されているところですので,後日ご紹介できるかもしれません。

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(hy)

健康増進アプリと薬機法

2018-11-08

スマートフォンのアプリにはとても便利なものがたくさんあります。歩数を計測するアプリは,日々の歩数を記録しますが,利用者の身長や体重,一歩当りの長さなどの情報を入力すれば,一日の歩行距離も出てきます。ウェアラブル端末で心拍数を記録しスマホに転送して,運動の強度や消費カロリーを算出してくれるものもあるようです。さらには,日々の食事をカメラに撮ることで,その食事のカロリーや栄養バランスを判定し,食生活についてのアドバイスをするようなアプリも可能でしょう。

このようなアプリは一般に「健康管理」アプリとか,「健康増進」アプリなどと呼ばれているようです。しかし,運動や食生活を見直すことは成人病予防にもなるでしょうから,「健康診断」アプリとか「病気予防」アプリなどといってもよさそうに思えます。けれどもそのような名称がつけられることはありません。なぜでしょうか。

東京都の国立国際医療研究センターは,糖尿病の発症リスク予測ソフトを開発し,ホームページに公開したところ,厚生労働省から問題がある旨の指摘を受けたというニュースが2・3日前に報じられていました。さきほど(平成30年11月8日)当該ソフトにアクセスしたら,「ただいま,一時的に公開を見合わせております。ご迷惑をおかけし申し訳ありません。」と表示されていました。

報道によれば,このソフトは,身長,体重,腹囲,血圧,喫煙習慣などを入力すると,糖尿病の3年以内の発症リスクが予測できるというもののようです。3万人のデータをもとにAIを活用して開発したとのことで,発症リスクは「%」で示され,「あなたへのアドバイス」として「糖尿病予備軍に該当」などと表示されるようです。厚生労働省は,このソフトが法律に抵触する可能性があると指摘したようです。

ところで皆さんは薬機法という法律をご存知でしょうか。かつての薬事法が改正されたもので,正式名称は「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。この法律によれば,例えば,医療機器を製造(設計を含みます。)販売するには,厚生労働大臣の承認が必要とされています。そうすると,何が「医療機器」に該当するかが問題となりますが,薬機法によれば,「医療機器」とは,疾病の診断,治療,若しくは予防に使用されること,又は身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等と定義され,具体的には,政令に列挙されています。

そして,政令では,「疾病診断用プログラム」「疾病治療用プログラム」「疾病予防用プログラム」が「医療機器」に該当するとされています。また,薬機法では,医療機器プログラムを電気通信回線を通じて提供することも「製造販売」に含まれるとされているので,結論としては,これら「疾病診断用プログラム」等を設計したり,アプリとして利用させたりするためには,厚生労働大臣の承認が必要とされるわけです。

もっとも,何をもって「診断」「治療」「予防」に該当するかはなかなか難しい問題ですよね。この点について,厚生労働省は,薬事法が薬機法に改正された直後の平成26年11月に「プログラムの医療機器への該当性に関する基本的な考え方について」という通知を出しています。この通知では,プログラム医療機器について,「汎用コンピュータや携帯情報端末等にインストールされた有体物の状態で人の疾病の診断,治療若しくは予防に使用されること又は人の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされているもの」と整理しています。その上で,医療機器に該当するプログラムと該当しないプログラムの具体例をいくつか挙げているのが,この通知の特徴です。

医療機器に該当するプログラムの例としては,例えば,「医療機器で得られたデータを加工・処理し,診断又は治療に用いるための指標,画像,グラフ等を作成するプログラム」や「治療計画・方法の決定を支援するためのプログラム(シミュレーションを含む)」などが挙げられています。

他方,医療機器プログラムに該当しないものとしては,「日常的な健康管理のため,個人の健康状態を示す計測値(体重,血圧,心拍数,血糖値等)を表示,転送,保管するプログラム」や「携帯情報端末内蔵のセンサ等を利用して個人の健康情報(歩数等)を検知し,健康増進や体力向上を目的として生活改善メニューの提示や実施状況に応じたアドバイスを行うプログラム」などが例示されています。

ここで,ようやく「健康管理」「健康増進」という冒頭のキーワードが出てきました。厚生労働省の通知が一つの根拠となって「健康増進プログラム」などという言い方が普及しているように思います。他方,「診断」「治療」「予防」などという言葉は,薬機法の観点から使用すべきではないということでしょう。もちろん,プログラムの中身が疾病の診断に使用されるものであれば,いくら「健康増進」という名称を使用しても薬機法に抵触することになります。

アプリケーションを開発するエンジニアの方などは,この点は注意する必要があるでしょう。また,保険会社など膨大な健康情報を有している企業などは「健康増進」アプリの開発を考えるかもしれませんが,その内容が「診断」「治療」「予防」にならないかどうか,十分な検討が必要になると思います。

 

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(hy)

外国判決と強制執行

2018-10-31

日本の企業が,外国X国において,X国国民から損害賠償請求の裁判を提起され,賠償を命ずる判決が確定した場合,原告は,日本企業がX国に保有する資産に対して,X国の法令・手続に則り強制執行をすることができるでしょう。それでは当該日本企業がX国に資産を有していない場合,当該日本企業が日本において保有する資産に対して強制執行をすることができるでしょうか。

本来,裁判作用は国家主権の一作用であり,裁判はそれが下された国家の主権の及ぶ範囲でのみ効力を有するのが原則です。
しかし,それでは,現代のように,国際化が浸透した社会においては,その原則を貫くことは困難です。日本においても,法律は,外国判決の承認・執行制度を設けています。

まず,民事訴訟法は,外国裁判所の確定判決について,以下の全ての要件を満たす場合には,効力を有すると定めています。ここでの要件とは,①法令・条約により外国裁判所の裁判権が認められること,②敗訴被告に対し訴訟開始文書が現実に送達されたこと,③外国判決の採用・訴訟手続が日本における公序良俗に反しないこと,そして,④相互の保証のあること,すなわち,当該外国が日本と同程度の要件の下に,日本の判決が効力を有するものとされていること,の4つです。

そして,外国判決をもって日本国内で強制執行をするためには,執行判決を得なければならないとされ,この執行判決が債務名義となると民事執行法で規定されています。執行判決を求める訴えが日本の裁判所に提起された場合,日本の裁判所は,上記の①②③④要件を満たすか否か判断し,満たしている場合には,外国裁判所の判決による強制執行を許す旨の宣言を執行判決においてします。

問題は外国判決と日本の判決が抵触している場合です。裁判例では,同一事件について,日本の裁判所の確定判決と矛盾・抵触する外国判決の承認・執行を求められた場合には,外国判決を承認・執行することは「公序」に反するとしています。つまり,この場合には,執行判決を求める訴えは却下されます。以上が,外国判決の日本国内における効力の一般的なルールです。

ところで,上記では,「X国に財産がある(ない)」とか「日本国内に財産がある」ことを前提としていましたが,そもそもどういった場合に「X国に財産がある(ない)」といえるのでしょうか。

不動産や動産であれば,物理的にX国内にあるか日本国内にあるか判定できます。では,被告の日本企業が保有している資産が債権である場合はどうでしょうか。あるいは,株式であればどうでしょうか。X国の法令に依ることになるでしょうが,債権の場合,債務者がX国に住所を有していればX国にある資産のように思われます。また株式の場合,発行会社がX国の法律に基づき設立され本店がX国内にある会社であれば,X国にある資産のように思われます。

そうとすれば,仮に,被告の日本法人がX国の企業と合弁事業をX国で展開していて,X国企業の株式を保有している場合,それは,X国内の資産であるとして,日本における外国判決の承認手続を経ることなく,X国の執行手続に基づき直ちにX国内で強制執行することができるということになりそうです。

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配偶者居住権

2018-10-22

民法の相続関係の大幅な改正作業が進んでいることについては,以前ご紹介いたしましたが,本年7月6日に法律案が国会で可決されました。ここでは,今回の改正の目玉の一つである配偶者居住権について説明いたします。

配偶者居住権とは,被相続人の配偶者が,被相続人所有の建物に相続開始時に居住していた場合,一定の要件の下,居住建物に無償で使用・収益する権利を取得するという制度です。配偶者居住権の存続期間は,原則として配偶者の終身の間とされており,また,他者に譲渡することはできません。

配偶者居住権の取得が認められるのは,配偶者居住権が遺贈の目的とされた場合又は遺産分割により配偶者居住権を取得するものとされた場合に限られます。共同相続人間の遺産分割協議が整わない場合,家庭裁判所の審判による取得も認められますが,配偶者に確実に取得させたい場合には,遺言により,配偶者居住権を遺贈の目的としておくべきと考えられます。

改正法施行後,実務上では,配偶者居住権の額の評価が問題となるでしょう。仮に,被相続人に配偶者と子一人がいる場合,配偶者と子の相続分は2分の1ずつとなりますが,相続財産が居住建物のみであると仮定し,居住建物の評価額が2,000万円,配偶者居住権の評価額が1,000万円と仮定すると,配偶者が配偶者居住権を,子が配偶者居住権負担付建物所有権を取得するという遺産分割が考えられます。これはもっとも単純化した例ですが,現金・預貯金等相続財産が他に存在したり,相続人が多くいる場合には,配偶者居住権の額の評価が問題となる事例が生じるのではないかと思われます。

なお,この改正法では,配偶者が,相続開始時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合,遺産分割によりその建物の帰属が確定するまでの間又は相続開始から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間,引き続きその建物を使用することができるという配偶者短期居住権も創設されています。

配偶者居住権,配偶者短期居住権制度に係る改正法は,公布日(平成30年7月13日)から2年以内,つまり,平成32年7月までに施行されることになっています。

 

 

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東証のシステム障害

2018-10-22

東証のシステム障害に関して,当事務所弁護士のコメントがニュースに掲載されました。関心がある方は是非お読みください。

https://www.bengo4.com/internet/n_8720/

 

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自筆証書遺言保管制度

2018-03-02

法務大臣の諮問を受けた法務省の法制審議会民法(相続関係)部会は,民法(相続関係)等の改正について平成27年4月より検討を重ねてきましたが,平成30年1月16日,「民法(相続関係)等の改正に関する要綱案」を決定し,法務大臣に答申しました。
政府は,この要綱案を元に民法(相続関係)等の改正案を閣議決定し,国会に提出することになります。

民法の相続関係の大幅な見直しは,配偶者の法定相続分の引き上げや,寄与分制度を創設した昭和55年改正以来約40年ぶりとなります。

今回の要綱案は,一方配偶者が亡くなった場合の他方配偶者の居住権を保護するための方策,遺産分割に関する見直し,遺言制度に関する見直し,遺留分制度に関する見直し,相続の効力(権利義務の承継等)に関する見直し,相続人以外の者の貢献を考慮するための方策(特別寄与者)など非常に多岐にわたっています。

その中で,自筆証書遺言の保管制度の創設が盛り込まれておりますので,ここで取り上げたいと思います。

民法が認めている普通の方式による遺言の種類は,自筆証書,公正証書及び秘密証書の3つです。
自筆証書遺言は,誰にも知られずに作成できるという,一番手軽な遺言の作成方式ですが,他方で,遺言書が発見されない危険性や,偽造・変造される危険性,遺言書の紛失や他人による隠匿・破棄の危険性などがあると言われています。
公正証書遺言によれば,これらのリスクは極めて軽減できますが,逆に,費用が比較的かかることや公証役場に赴かなければならないことなどが公正証書遺言のデメリットとして挙げられます。

今回の要綱案では,自筆証書遺言の方式緩和(財産目録は自書する必要なし。)と合わせて自筆証書遺言保管制度を打ち出し,自筆証書遺言の利用促進を企図しているように思えます。
ただ,これには別の見方もできるように思います。自筆証書遺言は偽造・変造の危険性があるため,例えば,銀行実務では極めて慎重に取り扱われます。自筆証書遺言について保管制度ができれば,そういったリスクはある程度は軽減できます。つまり,いままでのいわば「裸の」自筆証書遺言を,公的機関が保管する自筆証書遺言に移行することを企図しているようにも思えるのです。
現に,自筆証書遺言保管制度創設は,銀行サイドの意向が強く反映されているようで,法制審議会のある委員(某メガバンク)も「第5の制度(引用者注:自筆証書遺言保管制度を指す。)の設計については,私どもからも要望したところということもございますけれども,例えばご検討いただいた保管する際の遺言の方式の審査とかのチェックとか,自筆証書の遺言の撤回について,何らかの規律が入ればよいのかなとは思ってはおりました。」などと発言しています。

さて,自筆証書遺言保管制度の骨子は以下のとおりです。

遺言者は,自らが法務局に出頭して,自筆証書遺言の保管を申請できる。

法務局は,遺言の方式の適合性を外形的に確認する。

法務局は,遺言書を保管し,かつ遺言書の画面情報をスキャンして画像情報化して保管する。

遺言者は,遺言書の返還・閲覧を請求することができる。

相続人や受遺者は,遺言者の死亡後,保管された遺言の閲覧や遺言画像情報の証明書の交付を法務局に請求しうる。

自筆証書遺言のメリットの一つは,内容及び存在自体の秘匿性ですが,保管制度の下では,遺言書がスキャンされます。つまり,遺言書の内容は法務局の職員に見られるわけで,その点で抵抗がある遺言者がいるかもしれません。
要綱案では,「遺言書(無封のものに限る。)」とされていますので,封をしたままの自筆証書遺言をあずけることはできません。

要綱案では,「法務局の事務官が,当該遺言の民法第968条の定める方式への適合性を外形的に確認し」と書かれています。
民法968条というのは自筆証書遺言の方式要件を定めた規定で,方式を満たさない遺言は無効とされます。これを法務局の職員がどこまでチェックするのでしょうか。明白な誤りは指摘してくれるのでしょうが,細かい点まではたしてチェックしてくれるのか。

法務局で受領され保管されたのだから,遺言者としては「不備はない!」と考えるでしょうが,仮に方式違背があった場合,遺言書は無効になってしまい(しかもそれが発覚するのは多くは遺言者の死後でしょう。),それは遺言者本人の落ち度であって,法務局に責めを負わせることはできないのでしょう。
要綱案の「外形的に確認」という表現はこれらの事情を非常に微妙に表現しているように思えます。

遺言者は,保管してもらっている遺言書の返還を求めることもできます。これに関連して遺言の撤回との関係が問題となります。
遺言の撤回は原則自由ですが,保管制度を利用した遺言を撤回する場合にはどうするのか,法制審議会でも議論があったようです。

一旦保管された遺言を撤回する場合には保管された遺言の取り戻しを義務付けるべきという意見もあったようですが,要綱案では言及がないので,そのような考えはとらなかったということです。
撤回をしたからといって保管されている遺言を取り戻す義務はなく,また,過去の遺言が保管されたままで,後日,別の内容の遺言を作成し,それについては保管を申請しないこともありえます。
保管申請には遺言者自らが法務局に出頭する必要がありますが,出頭が面倒と考えたり,高齢や病気などのため出頭できない状態で遺言を書き換えたいという場合もあるでしょう。

つまり,自筆証書保管制度は,ある遺言者についての,その時点で有効である唯一の自筆証書遺言が法務局に保管されているということを担保するものではなく,そのようなことを企図してもいないということです。自筆証書遺言という簡明で自由な制度の維持を前提としての保管制度ですので,その点はいたしかたないでしょう。

この保管制度がどの程度利用されるのかは分かりませんが,他方,システムの費用は相当かかると思います。保管された遺言画像を全国の法務局からアクセスできるようにし,また,遺言者の戸籍情報にもリンクさせる必要があるように思います。仮に,保管制度について利用可能な全国の法務局の数が制限されるのであれば,利用は伸びないでしょう。

あと,利用者として気になるのは法務局に支払う手数料の額です。公正証書遺言の公証人手数料よりは格安でしょうが,手数料がいくらくらいであれば保管制度を利用したいと皆さんは思いますか?

 

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(hy)

NHK受信契約最高裁判決

2017-12-11

平成29年12月6日,NHKの受信契約についての最高裁大法廷判決が言い渡されました。報道でも大きく取り上げられました。

私は,かつて,在日米軍が日米地位協定を理由にNHKの受領料を払っていないというニュースに関し,短いコメント文を書いたことがあるのですが,それを読まれた方々から,「NHKの受信契約は拒否できないのか?」と相談を受けたこともあったので,今回の大法廷判決の内容についてはとても興味がありました。

問題となるのは,放送法64条1項で,「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は,協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」と規定されています。「協会」というのは,日本放送協会,つまりNHKのことです。「受信設備」というのは,ようするにテレビのことですね。
この規定は,「受信設備を設置した者」と規定しており,「受信している者」と規定していないところが,一つのミソですね。
そして,そのような者は,「受信についての契約をしなければならない。」と規定しています。
この「契約をしなければならない。」とは,どういう意味なのでしょうか。

この点,最高裁判決の多数意見は,「受信設備設置者に対し受信契約の締結を強制する旨を定めた規定である。」と述べています。
多数意見は14名の裁判官,反対意見(受信契約の締結義務は判決により強制できない。)は1名の裁判官です。

では,テレビ設置者がNHKとの契約に応じない場合,どの時点で契約が(強制的に)成立するのでしょうか。

NHK側は,NHKによる受信契約の申込がテレビ設置者に到達した時点で契約が成立すると,主位的請求で主張していました。
しかし,多数意見は,「任意に受信契約を締結しない者との間においても,受信契約の成立には双方の意思表示の合致が必要」とし,NHKからの受信契約の申込みに対して受信設備設置者が承諾をしない場合には,NHKがその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め,その判決の確定によって受信契約が成立すると解するのが相当であると判示しました。

民法414条2項ただし書きは,履行の強制に関し,「ただし,法律行為を目的とする債務については,裁判をもって債務者の意思表示に代えることができる。」と規定しています。そして,民事執行法174条1項は,意思表示の擬制に関し,「意思表示をすべきことを債務者に命ずる判決その他の裁判が確定し(中略)たときは,債務者は,その確定(中略)の時に意思表示をしたものとみなす。」と規定しています。

最高裁の多数意見は,これら民法,民事執行法の規定により,受信契約の強制が実現されると判断していることになります。
つまり,NHK勝訴の判決が確定した時,テレビ設置者はNHKの契約の申込を「承諾」したこととみなされ,この時点でNHKとテレビ設置者との間に申込・承諾という意思表示の合致があり,受信契約が成立するということです。

そうすると,次に,テレビ設置者は,いつの時点から(いつの時点の分の)受信料を支払わなければならないかが問題となります。

判決が確定したときに契約が成立するので,その月以降の分について受信料支払いが問題となるようにも思えます。
しかし,多数意見は,「受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生する」と判示しています。
多数意見のロジックによると,例えば,ある年の1月にテレビを購入し,部屋に設置したが,NHKとの契約を拒否し続け,NHKから裁判を提起され,その年の10月にNHK勝訴の判決が確定した場合,テレビを設置した1月以降の分の受信料支払い義務が発生するということになります。
契約の効力が遡っているようにも感じられますが,この点は,補足意見によると,契約の効力が遡るのではなく,受信設備の設置の時(上記の例ではテレビを部屋に置いた1月)からの受信料を支払う義務を負うという内容の契約が,意思表示の合致の日(上記の例では判決が確定した10月)に成立するのであると説明されています。

このような多数意見の考え方には批判もあり得ます。
補足意見や反対意見に指摘があるように,放送法自体には,受信契約の内容が何ら具体的に規定されていません。
どういう契約内容なのかについては,法律ではなく,NHKの策定する「放送受信規約」というものにより定められています。
そこでは,テレビが設置される場所が住居である場合,「放送受信契約は,世帯ごとに行うものとする。」と定められています。1世帯で複数住居なら,住居ごとが単位になるとのことです。また,同一世帯の1の住居にテレビが何台あっても,契約は1,受信料も1ということのようです。

個別的な意思表示の合致によって契約が成立するとしながら,その契約単位は世帯ごとというのはどういうことでしょうか。同一世帯に複数人がいるばあい,誰が契約当事者になるのでしょうか。

なお,今回の判決は,受信料債務の消滅時効についても言及しています。受信料債務が5年の時効にかかるということは以前から判例があるのですが,その起算点はいつかという問題です。
多数意見は,「受信契約に基づき発生する受信設備の設置の月以降の分の受信料債権(受信契約成立後に履行期が到来するものを除く。)の消滅時効は,受信契約成立時から進行する。」と判示しています。

この考え方によると,テレビを設置しながらNHKに受信料を支払っていない人のうち,NHKと受信契約は締結したが支払いをしていない人の場合には時効消滅する余地はあるが,NHKと受信契約をせず支払いをしていない人の場合には時効消滅する余地がないことになります。
この点,多数意見は,「不均衡であるようにも見える。」が「やむを得ない」としています。

最後に,受信契約の契約率を示しておきます。NHKが推計し公表するところによれば,受信契約の契約率は,平成28年度末において約8割であるとのことです。

 

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改正民法の施行時期

2017-11-21

民法は,わたしたちの日常生活において,一番身近な法律であるといえます。
とくに,契約等の規定は,より一層そのようにいえると思います。

ところが,民法の債権関係の規定は,明治29年(1896年)に民法が制定された以降,約120年にわたって,ほとんど改正されることなく現在に至っています。
その間のわたしたちの社会・経済生活の変動はいうまでもないでしょう。
ちなみに,1896年は,アテネで第1回オリンピックが開催された年のようです。

その民法(債権関係)の改正法が,今年の5月26日に国会で成立し,6月2日に公布されました。
法務省によると,改正の項目は,小さなものまで含めると合計200程度とのことです。

例えば,複数の短期消滅時効を廃止し,原則として消滅時効の期間を統一する改正,法定利率の引き下げと市中の金利動向に合わせた変動制度の採用,事業用融資について一定の場合に公証人の関与を要求して安易に保証人なることによる被害を防止する改正,定型約款による取引の安定と円滑化を図る規定の導入など,多数にわたっています。

このブログでも,個別的な改正内容について,説明ができればいいなと思っています。

さて,この改正法の施行日ですが,公布の日である平成29年(2017年)6月2日から3年以内に施行することとされていますが,この範囲内で,法務省は,平成32年(2020年)の施行を目指して準備を進めているとのことです。

2020年は,奇しくも東京オリンピックの年にあたりますね。民法制定から(そして第1回近代オリンピックから)124年を経て,改正法が施行されることになります。

 

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弁護士法に基づく照会と報告義務

2017-10-05

弁護士法23条の2は,「報告の請求」として,次のように規定しています。

「弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。
2 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。」

例えば,交差点での交通事故に基づく損害賠償請求事件において,信号が赤から青に変わったタイミングについて双方当事者の主張が対立している場合,弁護士法照会制度を利用して警視庁交通部の担当課に信号機の信号サイクルについて照会するということが考えられます。

この照会制度について,近時,高裁にて興味深い判決が出されました(名古屋高裁平成29年6月30日判決)。

このケースは,ある人物宛ての郵便物について,転居届が提出されているか否か,転居届の届出年月日,新住所,新住所の電話番号について,郵便事業株式会社(当時の商号。現商号は日本郵便株式会社)に対して愛知県弁護士会が照会したところ,郵便事業は照会に応じないと回答したというものです。

この判決でまず目につくのは,主文で,照会についての報告義務がある事の確認請求を認めていることです。

主文第1項は次のように述べています。
「被控訴人(引用者注:日本郵便のことです。)が,弁護士法23条の2第2項の規定に基づき控訴人(引用者注:弁護士会のことです。)がした別紙の照会のうち,〇〇(引用者注:特定の人物の個人名です。)宛の郵便物についての転居届の提出の有無,転居届の届出年月日及び転居届記載の新住所(居所)について,控訴人に対し報告する義務があることを確認する。」

この点に関し,この判決は,次のように述べた上で,本件に関し,確認の利益は認められるとしています。

「23条照会は、依頼者の私益を図る制度ではなく、事件を適正に解決することにより国民の権利を実現し、弁護士の受任事件が訴訟事件となった場合には、当事者の立場から裁判所の行う真実の発見と公正な判断に寄与する結果をもたらすという公益を図る制度として理解されるべきであるから、23条照会を受けた公務所又は公私の団体は、照会事項を報告すべき法的義務があるとともに、23条照会が公法の性質を有する弁護士法により認められた公益を図る制度であることに照らせば、その義務は公法上の義務であると解される。」

もちろん,照会先において,照会事項を報告すべき法的義務があるからといって,照会事項全てについて無条件で報告しなければならないわけではありません。

本判決は,「23条照会については、照会先に対し全ての照会事項について必ず報告する義務を負わせるものではなく、照会先において、報告をしないことについて正当な理由があるときは、その全部又は一部について報告を拒絶することが許されると解される。」と述べています。

それでは,どのような場合に報告しない「正当な理由」が認められるのでしょうか。

実際,日本郵便側は,転居届に係る情報は,憲法21条2項の「通信の秘密」,郵便法8条の「信書の秘密」「守秘義務」にあたるなどと主張し,「正当な理由」があると主張していました。

この点,本判決は次のように述べています。「被控訴人は、郵便法8条2項の守秘義務が、憲法21条2項後段を受けて定められていることを殊更に強調するが、国民の権利の実現や司法制度の適正な運営もまた、憲法上の要請にほかならない。したがって、報告を拒絶する正当な理由があるか否かについては、照会事項ごとに、これを報告することによって生ずる不利益と報告を拒絶することによって犠牲となる利益との比較衡量により決せられるべきである。」

弁護士会照会については,どういう場合に認められるかという質問を受けることも多いのですが,抽象的に一概に決めることはできず,本判決の示すとおり,個別具体的な事例における,慎重な利益衡量によって決せられるというほかはないでしょう。

現に,本判決においても,転居届が提出されているか否か,転居届の届出年月日,新住所については,報告義務有としましたが,新住所の電話番号については,電話番号を知る利益は日本郵便の守秘義務に優先させるのは相当でないとして,報告義務は及ばないと判示しました。

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(hy)

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