Archive for the ‘未分類’ Category

相続株式の評価方式

2017-09-19

亡くなった夫が所有していた株式を妻が相続した場合,その株式の価値をどのように評価するかで,相続税の申告が影響を受けます。相続により取得した株式が上場株式であれば,「株価」が判明しますので問題はありませんが,取引相場のない株式であった場合,どのような基準で算定すればよいのでしょうか。

この点に関し,財産評価基本通達という通達が定められていて,「取引相場のない株式」の価額は,問題となっている株式の発行会社の規模によって,評価方法の原則が定められています。

例えば,規模区分が大会社に区分される会社の場合,原則として,「類似業種比準価額」よって評価するとされています。これは,類似業種の株価を基に,配当金額,利益金額,純資産価額の3つを比べてして評価する方式です。

ところが,これには例外があり,一定の要件を満たす場合には,配当還元方式という方法が用いられます。これは,株式を所有することによって受け取る配当金1年分を一定の利率で還元して元本である株式の価額を評価するものです。

この点に関し,納税者側と税務者側で主張が対立するケースについて,先日,東京地裁で判決が言い渡されたと報じられています。訴訟の争点は,例外的方式が認められるか,具体的には,「同族株主以外の株主等が取得した株式」といえるかという細かい解釈論の争いになったようですが,このコラムで着目するのは,ずばり,評価額の差です。

報道によると,問題となった株式の価額について,税務署の主張する類似業種比準方式であれば1株2292円。

これに対し,納税者側が主張する配当還元方式であれば1株75円。その差は30倍を超えます。同一の株式の価値が評価方式が異なるとここまで差が生じることもあるのですね。この訴訟では,納税者側の主張が認められたとのことです。

 

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(hy)

窃盗犯人の顔写真の公開と脅迫罪,名誉棄損罪

2014-08-13

 フィギュアや古書漫画を販売する古書店が,ブリキ製の「鉄人28号」を盗まれたとして,ホームページ上で,返さなければ顔を公開すると犯人に警告しているというニュースが,このところ報じられていました。

結局,この古書店は,捜査に支障が出る旨の警視庁の要請を受けて,窃盗犯とされる男の画像公開を中止したそうです。

ところで,この古書店の行為に対しては,いろいろ批判が上がっているということも併せて報じられていました。

ある弁護士は,「警察の捜査を待ち,民事手続で返還を求めるのが正しい在り方」とのコメントを寄せたそうです。

確かに,この方法は正攻法ですが,このようなことが可能であれば,わざわざホームページでの画像公開など必要ないわけです。
犯人の住所・氏名がわかっていれば,警察に被害届を出すでしょうし,民事訴訟を提起すればよいということになります。

しかし,犯人の画像はあるが,どこに住む誰かがわからないため,この古書店は苦肉の策を講じたはずであって,このような正攻法では対応できないと考えたのでしょう。
警察の捜査を待てと言っても,犯人の画像それだけで警察が犯人を特定できるかは極めて難しいことでしょう。

また,他の法律家は,この古書店の行為は,脅迫罪に該当しうると述べておりました。本当に脅迫罪が成立するのでしょうか。

脅迫罪は,「生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知」した場合に成立します(刑法222条)。

そうすると,「盗んだものを返さなければ画像を公開するぞ。」ということが,「自由又は名誉に対する加害の告知」といえるかが問題となります。

本件が,一般的な脅迫のケースと異なる点は,権利実行の告知という側面があるということでしょう。
例えば,「返さなければ告訴するぞ。」と告知することは脅迫になるのでしょうか。あるいは,「返さなければ警察に画像を渡すぞ。」と告知することは脅迫になるのでしょうか。
これらの行為と,「返さなければ画像をネットで公開するぞ。」と告知する行為はどこが異なるのでしょうか。

盗まれたものを返せと告げることは適法な権利実行の告知です。適法な事実の告知が違法(つまり脅迫)となるというのはおかしいので,本件の古書店の告知が脅迫に該当するためには,「画像をネットで公開する。」という点が違法行為であると解することになるのでしょう。

なぜ,違法であるかというと,「この男が犯人だ」と不特定多数者に見せることが,その男の名誉を侵害しうるからでしょう。

そうすると,古書店の行為が脅迫罪に該当すると解するためには,ネットで犯人画像を公開することが名誉棄損になるということをも論じなければならないように思えます。

ちなみに,脅迫罪は,不特定多数者に告知したか否かは犯罪の成否に影響しないので,本件の古書店のように,ホームページで「返さなければ画像をネットで公開するぞ。」と告知したとしても,犯人に(のみ)面と向かって「返さなければ画像をネットで公開するぞ。」と告知したとしても,結論は変わらないことになります。

そこで,名誉棄損の問題が生じるわけですが,この点も,ある法律家が,本件で名誉棄損が成立する,公益目的はないとコメントを寄せていたようです。

名誉棄損は,公然と事実を適示し,人の名誉を棄損した場合に,その事実の有無にかかわらず成立します。「公然」というのは,不特定多数人が認識できる状態をいいます。「名誉」というのは,よくわからない点がありますが,一般的には,人に対する現実の社会的評価,世評,名声を指すと解されています。そして,名誉棄損は,事実の有無にかかわらず成立します。

従って,虚名も保護されることになります。つまり,社会の評価が不当に高い場合でも,真実を暴いてはいけないということです。窃盗犯が窃盗行為を行ったことが真実であったとしても,「この男が窃盗犯であるとして男の画像をネットでばらまく」という行為は,公然と事実を適示して男の名誉を棄損していることになります。

ただし,名誉を侵害する行為であっても,それが,①公共の利害に関する事実であり,②目的がもっぱら公益目的である場合には,適示事実が真実であることを証明すれば罰せられないと刑法230条の2は規定しています。
その上,起訴前の犯罪行為に関する事実については,①の公共の利害に関する事実とみなすとされています。

従って,本件の古書店の行為については,②の目的の公益性が認められれば,名誉棄損は成立しないことになります。

目的の公益性というのも,それ自体抽象的な概念なので,わかりにくい点があるとはいえますが,本件でいえば,犯罪行為の摘発それ自体は,被害者のみならず広く社会一般の関心事なので,犯人摘発を目的としていると考えれば,目的の公益性は認められる余地はあると思います。

他方で,盗まれた物の返還を目的としているのであって,私物の返還を求めているわけだから,公益目的ではなく私益目的だろう,と考えることもできるのでしょう。

ただ,いずれにしても,報道されていた法律家のコメントのように,公益目的はないと断ずるのは疑問に思いました。
まぁ,そもそも名誉棄損は親告罪なので,犯人が告訴するとはちょっと考えにくいわけですけど。

ところで,犯人の画像は,ネットだけでなく,それ以外にも我々は目にしますよね。例えば,指名手配犯のポスターなどです。

あれは,なぜ警察による名誉棄損とか脅迫とか言われないのかというと,犯人検挙のために捜査機関が行っているためで,公益目的が明らかだから名誉棄損が成立しないのではないかと思います。そして,名誉棄損が成立しないから,違法な事実の告知ではなく,したがって脅迫罪も成立しないということになりそうです。また,脅迫罪については,捜査機関の正当な業務行為として違法性が阻却されると考えることもできるのでしょう。

そのように考えると,結局は,問題は,最初に引用した弁護士の言葉,つまり,

「警察の捜査を待ち,民事手続で返還を求めるのが正しい在り方」

という考えに戻ってくるように思います。つまり,犯罪被害者が自ら行為をした場合には脅迫罪,名誉棄損罪に該当する可能性がある半面,捜査機関が行えばそれらには該当しない,だから捜査機関に任せなさいということです。

これは,結局のところ,「自力救済の禁止」,つまり,権利を違法に侵害された場合に,国家機関の法定の手続によることなく,自ら実力をもって権利の救済を図ることを禁止されることに繋がっている話のように思います。

ところで,本件の報道,私が見た範囲では,全ての記事が「万引き」「万引犯」などという表現が用いられており,「窃盗犯」などという表現は皆無でした。

古書店のホームページでは,「万引き」などと言う表現は用いられておらず,「盗んだ犯人」と表現されていました。

この盗まれた「鉄人28号」,代金はなんと25万円とのことです。25万円もの商品を盗んだ事実を「万引き」と表現する感覚には疑問を持ちました。万引き―軽微な犯罪―画像公表はやりすぎ,というのが,各報道機関のスタンスだったのでしょう。

この古書店はとても気の毒に思いますね。

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(hy)

第3のビールと酒税

2014-06-05

このところ暑い日が続きました。

暑いと言えば,やはりビールとなりますが,昨日,サッポロビールが第3のビールとして販売しているある商品の販売を終了するという報道がなされていました。

報道によると,当該商品が第3のビールに該当しない可能性があるとのことです。

ご存じのとおり,ビールには酒税が課せられています。酒税法第1条も「酒類には,この法律により,酒税を課する。」と規定されています。

そして,「酒類」とは何かという定義規定がこと細かに定められているわけですが,ビールは,発泡性酒類に分類されています。

発泡性酒類には3種類あって,ビール,発泡酒,その他の発泡性酒類に区分されており,この「その他の発泡性酒類」が第3のビールと呼ばれているものです。

ビールの定義は,①麦芽,ホップ及び水を原料として発酵させたもの,②麦芽,ホップ,水及び政令指定物品を原料として発酵させたもので,当該物品重量合計が麦芽の重量の50%を超えないもの,とされています。

発泡酒の定義は,麦芽又は麦を原料の一部とした酒類で発泡性を有するものとされています。

そして,ビール及び発泡酒以外の発泡性を有する酒類がその他の発酵性酒類,つまり第3のビールということになります。

以上は大まかな定義の紹介で,実際にはかなり細かい規定で分類されています。

そして,肝心の税率ですが,1キロリットル当たり,ビールは22万円,発泡酒は17万8125円又は13万4250円(麦芽の重量によって税率が二種に区分されています。),第三のビールが8万円とされています。

1キロリットルという単位はピンときませんので,350ml缶に換算すると,

ビールが77円,

発泡酒が約62円又は約47円,

第3のビールが28円となります。

ずいぶん差が大きいですね。

ある報道によると,サッポロビールはこれまで納めた税金との差額分として100億円以上を納付しなければならない可能性が示されていました。結果は甚大ですね。

酒税をできるだけ抑えるため,ビール製造各社は,発泡酒や第3のビールの商品開発,研究,製造を行っているわけですが,発泡性酒類の分類によってこれだけの結果の違いが生ずるということは,相当丁寧な酒税法の解釈,当てはめが必要となってくるということでしょう。

ところで,酒税法も消費税と同じ間接税の一つですが,なぜ酒類の製造者は酒税を納めなければならないのでしょうか。

一説には,酒類はタバコと並んで,他の物品と並んで特殊な嗜好品としての性格に着目して課税がなされるなどと説かれますが,あまり説得力はないように思います。

酒税は,戦前においては国税収入の第1位を占めていた時期もあったようですが,現在では国税収入の約3%程度のようです。

いずれにしても,飲めば飲むだけ国税収入に貢献しているということになりますね。

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再審について

2014-04-01

このところ,再審についてのニュースが続きました。

先週は,いわゆる袴田事件について,静岡地裁において,再審開始決定が認められたと報じられました。

今週は,いわゆる飯塚事件について,福岡地裁は再審請求を退けたと報じられました。

いずれのニュースも,法曹関係者のみならず,各方面に波紋を投げかけていると思います。

ここでは,具体的な事件の内容や裁判所の判断の当否についてではなく,再審制度そのものについてちょっと触れてみたいと思います。

ところで,みなさんは,権力,あるいは国家権力というと,真っ先に何を想定されますでしょうか。軍隊や警察を想起されるかたが多いのではないかと思います。

あるいは,国会や政党内部において,数の論理に従って国会議員の取り込みが問題となると,新聞などが揶揄して「権力闘争」などという言葉を使ったりもします。

立法権や行政権はもちろん国家権力ですが,私の印象としては,国家権力=裁判です。モンテスキューは,「人間の間でしかく恐るべき裁判権力」と表現したそうです。

この裁判を権力足らしめているものは,裁判の最終性にあると私は思います。裁判は,紛争の対立する二当事者が,自己の主張・立証を十分尽くすことができる手続が保障されることを前提に,公平な第三者である裁判官が判断を下すという点に正当性の根拠があるわけですが,裁判官の判断は,終局的なものです。

もちろん,制度上,一審制がとられたり,三審制がとられたりということはありますが,最上級審の裁判官の判断は最終的なものです。この点が,裁判を権力足らしめているのだと思うのです。

刑事事件でいえば,判決が確定すれば,被告人の意思にかかわらず刑は執行されます。

民事事件でもそうです。民事執行法61項には,「執行官は,職務の執行に際し抵抗を受けるときは,その抵抗を排除するために,威力を用い,又は警察上の援助を求めることができる。」と規定されています。実際に,建物明渡訴訟などで,債権者代理人として,警察の援助の要請をするよう執行官に求めた経験もあります。

裁判の最終性の例外は,恩赦ぐらいではないでしょうか。

仮に,裁判に最終性が付与されないとしたら,当事者がいつまでも争えるとしたら,裁判制度は,社会制度として全く意味をなさないものになるでしょう。

他方で,裁判官も人間であり,神ではないので間違いもあり得ます。間違った判決に拘束されることは正義に反する,その不正義からの救済として再審制度が位置付けられるのでしょう。

歴史的に見れば,全ての裁判制度が再審制度を持っていたわけではないと思います。ある国家において,裁判を,社会統制システムと強く位置付けるほど,再審制度という概念は後退するでしょう。

そのように考えると,裁判制度における再審の位置づけについても,もっと深い議論があってしかるべきように思います。

現行の刑事訴訟法では,再審手続について,不明確な点が多いと思います。近時,元死刑囚の事件に対する再審開始決定がいくつかあり,その具体的内容は広く報じられていますが,同時に,再審制度の制度設計についての議論が進展することを望みます。

ちなみに,再審制度は,刑事訴訟ばかりでなく,民事訴訟でもあります。私が目にした例で一番すごいなと思ったのは,ある株式会社の総会決議不存在確認判決が確定し,当該決議に係る関連登記が抹消された後,当該決議不存在確認判決が再審により覆ったというケースがありました。法的安定性が重視される会社訴訟の確定判決が覆るなんて,関係者にとっては大変なことだと思います。

 

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hy

 

ビットコイン騒動

2014-02-28

 今週は,ビットコインの取引所を運営する東京の会社のサイトが閉鎖状態になっているとして,換金不能のおそれがあるのではないかという報道でもちきりでした。

今このブログを書きはじめた時点でも,同社のサイトにアクセスすると,当面すべての取引を停止することや,代表者(?)はまだ日本にいるが,従業員には質問をしないでほしいということなどが簡単に記載されているだけのようです。

ビットコインがどういうものであるかについては,私は技術的にはわかりませんので,報道されている範囲での知識しかありませんが,一言でいえば,インターネット上の仮想「通貨」のようです。

ビットコインが換金できないため,”WHERE IS OUR MONEY” と書かれたカードをもって同社に詰めかけている人の映像も報道機関から配信されていますので,さながら,銀行が経営破綻した場合の取り立て騒ぎのような様相を呈しています。

もし銀行が倒産した場合には,「俺たちの預金は保護されるのか?」「ペイオフとはどういうものか?」「倒産を防げなかった金融当局は責任を負うべきではないか?」などの議論が持ち上がると思いますが,今回のビットコイン騒動では,そのような動きにはなっていません。

ビットコインには,なぜ金融当局の規制が及ばないのでしょうか。

ビットコインは,財政難になったキプロス政権が預金凍結をした際,キプロス国民がビットコインへ資産を移す動きが増大し,一躍周知になったことからすれば,ビットコインを銀行預金と同視するという発想はあながち見当外れではないように思います。

日本の金融監督当局は金融庁ですが,金融庁の所掌事務は,金融庁設置法という法律に書いてあります。同法3条は,金融庁の任務として,「金融庁は,我が国の金融の機能の安定を確保し,預金者,保険契約者,有価証券の投資者その他これらに準ずる者の保護を図るとともに,金融の円滑を図ることを任務とする。」と規定しています。

「金融」とは何かという明確な定義は同法にはないようですが,預金者や有価証券の投資者の保護と書かれていますので,預金者に関係する銀行法や,有価証券に関係する金融商品取引法を見てみました。

まず,銀行法2条2項は,銀行業の定義として,「この法律において「銀行業」とは,次に掲げる行為のいずれかを行う営業をいう。」と規定し,二つの行為を列挙しています。

一 預金又は定期積金の受入れと資金の貸付け又は手形の割引とを併せ行うこと。

二 為替取引を行うこと。

まず,一号ですが,預金の受入れと資金貸付けを「併せ行う」ことと規定されています。どちらか一方では,銀行業とはいえないということです。ビットコインの取引所は,資金の貸付けを行いません。従って,ビットコインの取引所が,ビットコインの発行にあたって現金を受け入れますが,それが「預金の受入れ」に該当するかどうかを検討するまでもなく,一号には該当しないことになります。

次に二号の「為替取引」です。

「為替取引を行うこと」とは,顧客から,隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動することを内容とする依頼を受けて,これを引き受けること,又はこれを引き受けて遂行することをいう,というのが最高裁の考え方です(最決平成13年3月12日)。

ビットコインは,送金の手段としても用いられ,手数料が格安であることが報じられていますので,この「為替取引」に該当するのではないかとも思うのですが,違うのでしょうか。

ビットコインの取引所は,送金を請け負っているわけではなく,たまたま送金という手段に利用できるということなのでしょうか。

為替取引といえば,外為法だろうということで,外国為替及び外国貿易法を見てみると,同法8条は「この法律の適用を受ける取引又は行為に係る通貨による支払等(…中略…)は,財務大臣の指定する通貨により行われなければならない。」と規定されていて,「通貨」に着目していることがうかがえます。

また,日本銀行法では,「外国為替の売買」という用語が出てきますが,これは「為替」=「外国通貨」の意味で用いられているようです。「通貨」が絡んでいることが為替取引の大前提となっているのでしょうか。正直申し上げてよくわかりません。

なお,銀行以外にも,為替取引ができる業者として,資金移動業というものが認められていますが,ビットコインの取引が為替取引に該当しないということであれば,資金移動業も関係ないですね。

銀行が関係ないとすると,ビットコイン=有価証券ということで,証券会社が扱うべきものではないかという疑問も生じます。投資者を保護するという観点です。

しかし,金融商品取引法の有価証券の定義は限定列挙なので,ビットコインを有価証券と解釈することは無理があるでしょう。

と,以上のようなことをつらつらと書いていたら,なんと,東京のビットコイン取引所が民事再生手続開始の申立てをしたというニュースが飛び込んできました。金曜日の夕方というタイミングです。

 

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(hy)

無理心中は殺人だ!

2013-12-30

ちょうど一週間前,痛ましいニュースが報じられていました。

小学校の校庭で少年野球をしていた小学三年生の男の子が,父親に連れ出され,灯油のようなものをかけられて,火をつけられたというものです。

父親は死亡し,子どもは意識不明の重体と報じられていました。

新聞やインターネットのニュースの見出しは「無理心中」とされていましたが,殺人未遂容疑で捜査をすることまで言及していたメディアは必ずしも多くなかったような気がします。

無理心中などと書くと,なんとなく行為者の行為を非難する度合いが退行してしまうような気がしますが,そう感じるのは私だけでしょうか。

行為者が親であろうが誰であろうが,被害者は無理やり殺されて(殺されかけて)いるわけで,無理心中というのは殺人行為に外なりません。

手元の辞書で「心中」をひくと,「この世で添えないことを悲観した相愛の男女が,せめて来世では一緒になろうと,同時に自殺すること。」と定義されています。行為者が互いに自ら命を絶つという点が心中の本質のようです。

また,「無理心中」をひくと,「死ぬ意思のない相手を無理に道連れにして自殺すること。」と記載されています。

日本には,曽根崎心中に代表される心中物というジャンルがありますが,それは世界的にはあまり普遍的なことではないというようなことをかつてどこかで読んだことがあるような気がします。

ところで,心中は行為者が互いに自殺することを内容とするわけなので,法律的に言えば,行為者には自殺関与罪が成立することとなり,殺人罪より違法性が軽いと評価されますが,では,自殺する気がないのに,相手方に「一緒に死のう」とうそをついて持ちかけて,相手方だけが自殺してしまった場合(いわゆる「偽装心中」),何罪が成立するのでしょうか。

判例は,殺人罪が成立するといいます。

しかし,自殺関与罪は,自殺関与の手段について何ら限定していないので,「一緒に死ぬよ。」と相手方に嘘をついた場合にだけ殺人罪となると解するのは根拠がないと思います。

他方で,無理心中は,無理やり被害者を殺しているわけですから,行為者が自殺をしようとしまいと殺人であることに外ならないわけです。

ニュースでも,無理心中などという婉曲的な表現を用いず,端的に殺人(未遂)であると報じるべきなのではないでしょうか。

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秘密の定義

2013-11-26

特定秘密の保護に関する法律案(以下「特定秘密保護法案」といいます。)が,現在,国会で審議されていることは,みなさんご存知のことと思います。

本日お昼のニュースによれば,午前の衆議院国家安全保障特別委員会にて,自民,公明,みんな,日本維新の4党修正案が賛成多数で可決されたとのことですので,今後,衆議院本会議に上程されることになります。

この特定秘密保護法案については,いわゆる国民の知る権利との関係など,さまざまな議論がなされていますが,ここでは秘密の定義という観点を取り上げてみたいと思います。

秘密とは何か,一般に,秘密には形式秘と実質秘があるといわれています。

形式秘とは,秘密であると指定されたものが「秘密」であるという考え方です。例えば,「マル秘」と記載された文書の中味は秘密であるとするものです。文書の内容自体を問題とするのではなく形式的に秘密を定義するということですね。

他方,実質秘というのは,その内容を実質的に見て,秘密として保護に値すると認められるものを「秘密」とするというものです。現行の国家公務員法100条1項は「職員は,職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。」と規定していますが,最高裁(外務省秘密漏えい事件判決)は,「100条1項にいう秘密とは,非公知の事実であつて,実質的にもそれを秘密として保護に値すると認められるものをい」う,としています。

それでは,特定秘密保護法案にいう「特定秘密」とはどういうものでしょうか。同法案の骨子は,行政機関の長が特定秘密を指定するという点にありますので,「特定秘密」=形式秘と思われがちです。  この点,法案の3条を見てみると,

行政機関の長は,所掌事務に係る別表に掲げる事項(防衛,外交,特定有害活動,テロの4項目が挙げられています。)に関する情報であって,公になっていないもののうち,その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため,特に秘匿することが必要であるものを特定秘密として指定するものとする,

と書かれています。ここでは,単に指定があっただけでは特定秘密の要件は満たさず,4項目に関するもので特に秘匿必要のあるもの=「特定秘密」という建付けがとられているので,形式秘ではなく,実質秘ということになるかと思います。

秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議が平成23年8月にまとめた「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」においても,「実質秘であることを前提に,要式行為たる指定行為により保全対象たる秘密の外縁を明確化し,その範囲で厳格な管理を行うことが適当である。」と記されています。

そうすると,特定秘密として特定されたものが,実質的に見て本当に特定秘密なのか,という点は,国民一般はどのように知りうるのでしょうか。
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)5条3号は,

「公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」

を不開示情報としています。「特定秘密」はこれに該当すると思われます。

また,そもそも,何が「特定秘密」に指定されているのか一般国民には分かりませんので,情報公開法は使えないでしょうね。

そう考えると,一番端的な方法は,特定秘密を取扱い者が特定秘密を漏えいした場合には現行の国家公務員法より重い刑事罰が科されますが,その刑事手続の中で,当該漏えいされた情報が「我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため,特に秘匿することが必要であるもの」か否かを争うのが,最も実践的な方法となるでしょう。「特定秘密」に該当しないと裁判所が判断したら無罪となりますので(もっとも,国家公務員法上の秘密漏えい罪成立の可能性は残ります。)。

しかし,刑事罰を科されるリスクを引き受けないと特定秘密該当性について司法判断が下されないというのは問題でしょう。

上述の有識者会議は,次のように述べています。

「本法制は,その趣旨に従って運用されれば,国民の知る権利との関係で問題を生じたり,取材の自由を不当に制限したりするものではないと考えられる。しかしながら,ひとたびその運用を誤れば,国民の重要な権利利益を侵害するおそれがないとは言えないことから,国民主権の理念の下,政府においてはその趣旨に従った運用を徹底することが求められ,また,国民においてはその運用を注視していくことが求められる制度であることは,特に強調しておきたい。」

政府の運用を監視する第三者機関の設置というのは最低限必要になると思います。上述の衆議院特別委員会でも,首相は第三者機関の設置に前向きな答弁をしたとも報じられておりますが,果たしてどうなるでしょうか。

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裁判員裁判と経験則

2013-10-25

いわゆる,千葉大生殺害事件について,今月8日,東京高裁は,裁判員裁判だった第一審千葉地裁の死刑判決を破棄し,被告人に無期懲役を言い渡したとのニュースは,大きく報じられたため,覚えておられる方も多いと思います。裁判員裁判による死刑判決を破棄した2例目だとのことです。

殺人の被害者が一人であるという先例を重視したこの高裁判決に対し,「死刑判決の破棄 裁判員制度の趣旨揺らぐ」などの見出しで高裁判決を批判する新聞社説も目にしました。この高裁判決は,主として量刑が問題となったものですが,裁判員裁判の事実認定が経験則に反しているかについて,10月21日に最高裁の決定が出されましたのでとりあげます。

事案は,営利目的での覚せい剤の輸入に関するものです。非常に大雑把にいうと,運び屋が,国内に持ち込んだスーツケースの中に覚せい剤が入っていることを知っていたか否かという点が争点となったものです(最高裁は,スーツケースの中に違法薬物が収納されていることを被告人が認識していたかどうかということを「知情性」という非常に難しい言葉で表現しています。)。

被告人は,ウガンダ共和国を出発する際に,メイドにスーツケースの購入と衣類等の詰め込みを依頼し,そのまま自分は日本国内に入国するまで中味に手を触れていないなどと弁解し,違法薬物が入っているなど知らなかったと主張していました。

本件では,覚せい剤密輸組織が関与していることは明らかなようですが,第一審判決(裁判員裁判)は,被告人が本件スーツケースを自己の事故の手荷物として持ち込んだという事実から,特別の事情がなければ通常中味を知っているとまで推認することはできない,などと判断し,被告人に無罪を言い渡しました。

これに対して,検察官が控訴し,東京高裁は,(密輸組織が関与している)この種の犯罪において,運搬者が,誰からも何らの委託も受けていないとか,受託物の回収方法について何らの指示も依頼も受けていないということは,現実にはありえない,などと判示し,被告人に懲役10年及び罰金500万円を言い渡しました。

被告人は上告し,これに対して,最高裁は次のように述べ,高裁判決の結論を指示しました。

(この種事案については,特段の事情のない限り)「運搬者は,密輸組織の関係者等から,回収方法について必要な指示等を受けた上,覚せい剤が入った荷物の運搬の委託を受けていたものと認定するのが相当である。」

最高裁の論旨は,おおまかにいうと,次のようなものです。

①本件は密輸組織が関与している。

②密輸組織は多額な利益を得るため,目的地到着後運搬者から確実に覚せい剤を回収できる措置を講ずるはずである。

③運搬者に対して,荷物を引き渡すべき相手や場所を伝えたりするなど,荷物の回収方法について必要な指示をして運搬を委託する方法が,回収の確実性が高いので,密輸組織としては採用しやすい方法である。

④運搬者の知らない間に覚せい剤をその手荷物の中に忍ばせるなどして運搬させる方法は,密輸組織において目的地到着後に運搬者から覚せい剤を確実に回収できるような特別な事情がある場合に限られる。

⑤したがって,この種事案については,上記のような特段の事情のない限り,運搬者は,密輸組織の関係者等から,回収方法について必要な指示等を受けた上,覚せい剤が入った荷物の運搬の委託を受けていたものと認定するのが相当である。

そして,最高裁は,第一審判決(裁判員裁判)は,「この種事案に適用されるべき経験則等の内容を誤認したか,あるいは,抽象的な可能性のみを理由として経験則等に基づく合理的な推認を否定した点において経験則の適用を誤った。」と指摘しました。

刑事訴訟は,民事訴訟と異なり,控訴審は,第一審判決に事後的な審査を加える「事後審」であると考えられています。
そこで,控訴審における事実誤認の審査は,第一審判決が,論理則,経験則等に照らし不合理といえるかどうかという観点から審理すべし,ということになっています(H24.2.13最高裁判決)が,そのような審理方法をとっても,被告人に無罪を言い渡した第一審判決は,経験則の適用を誤った,というのが,今回の最高裁の決定です。

「経験則」というのは,手元の法律用語辞典によれば,「広く経験から帰納して得らえた知識,法則。日常生活から得られた一般周知の常識的なものから,専門の科学的研究によって見出された法則まで含む。」などと定義されていますが,今回の密輸組織の運び屋のケースは,専門の科学的研究など関係なく,上記①から⑤の推論が問題なわけで,常識的な経験の範疇だと思います。そうすると,今回の最高裁決定は,第一審の裁判員裁判は,「経験則の適用を誤った」と指摘しているわけですから,いいかえれば,「第一審は,常識はずれの事実認定をした。」と言っているに等しいように思います。ここまで言い切ってしまうと,言いすぎでしょうか。

いずれにしても,冒頭で指摘した死刑判決破棄のケースと併せ,今後,裁判員裁判の趣旨があらためてクローズアップされるように思います。

 

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主たる債務者兼保証人と消滅時効

2013-09-13

先週の新聞は,嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする民法900条4号ただし書きに関する最高裁の違憲判決のニュースで持ちきりでした。

この問題は,私も以前ブログで取り上げたことがあり(http://bigcircle.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-2d52.html),また,今回の最高裁判決では,違憲判決の効力についての補足意見も付されるなど(違憲判決の効力についても,ブログで取り上げたことがありました。http://bigcircle.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-229b.html),大変興味深いものですが,なにぶん,最高裁判決の分析が十分できていないため,この判決を取り上げるのは次の機会に譲ろうかと思います。

さて,今回取り上げるのは,主債務者が死亡し,保証人が主債務者を相続した場合に,保証債務の弁済が消滅時効の完成に影響を与えるかという点が争いとなった事件です(最高裁平成25年9月13日判決)。

親子間,あるいは配偶者間で,異なる法的地位に立つ二人がいる場合,一方の死亡によって他方が相続人となると,二つの異なる法的地位が,同一人に帰属するということが起こりえます。例えば,子どもが親に借金をしている状態で親が亡くなり子が相続した場合,債権者という親の法的地位と,債務者という子の法的地位が同一人である子のもとで帰属することになります。この場合には,その子は債権者かつ債務者となったわけで,原則として親が子に対して有していた貸金債権は混同により消滅することになります。

今回取り上げる判例のケースは,親が主債務者で,子が連帯保証人のケースです。事案は代位弁済などが絡んでやや複雑ですが,ごく簡略化すると,金融機関が親に金を貸したところ,親が亡くなり,子が単独でその親を相続した,その後,その子は,連帯保証契約の履行として,いくらか弁済をしたが,払えなくなったので,金融機関は訴えを提起したというものです。

この訴訟において,その子は,主たる債務が時効消滅しているとして連帯保証人としてこれを援用するとともに,連帯保証債務についても時効消滅しているとしてこれを援用しました。それに対して,金融機関は,連帯保証人として弁済していたのであるから,債務の承認として,主債務について時効中断の効力が生じると反論していました。

東京高等裁判所は,金融機関の時効中断の再抗弁を排斥して,主債務は時効消滅しているというこの主張を認めました。

本件では,子に,主債務者としての地位と,保証人としての地位が併存していることが問題なわけですが,さらに問題を複雑化する事情として,時効中断の相対効と,保証債務の附従性という問題があります。
時効中断の相対効とは,「時効の中断は,その中断の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ,その効力を有する。」(民法148条)という原則です。つまり,時効中断の効力は,他者に影響を与えないということです。他方で,保証債務の附従性というのは,保証債務は主たる債務の履行を担保することを目的としたものであるから,主たる債務が有効に存続することを前提とするという保証債務の性質のことです。つまり,保証債務は主債務に従属するということです。

時効中断の効力は相対的である半面,保証債務は主債務に附従する,これらは一見相反する内容に思われるので,議論が難しくなっているわけです。保証債務の附従性はあくまで保証債務が主債務に附従するもので,逆ではない。主債務と保証債務は別個の債務であるから,保証人が保証債務を「主たる債務」の時効完成前に一部履行したとしても,これによって保証債務の消滅時効が中断する(保証債務の承認にあたる)ことがあったとしても,これにより「主たる債務」の消滅時効が中断するわけではない。従って,保証人は依然としてその後に完成した「主たる債務」の消滅時効を援用できる,というのが,今までの議論の到達点だったように思います(私の手元にあるスタンダードなテキストにはそのように書いてあります。)。

これに対して,最高裁は,次のように判示し,主たる債務が時効により中断していると判断しました。

「…主たる債務者兼保証人の地位にある者が主たる債務を相続したことを知りながらした弁済は,これが保証債務の弁済であっても,債権者に対し,併せて負担している主たる債務の承認を表示することを包含するものといえる。これは,主たる債務者兼保証人の地位にある個人が,主たる債務者としての地位と保証人としての地位により異なる行動をすることは,想定し難いからである。したがって,保証人が主たる債務を相続したことを知りながら保証債務の弁済をした場合,当該弁済は,特段の事情のない限り,主たる債務者による承認として当該主たる債務の消滅時効を中断する効力を有すると解するのが相当である。」

保証人兼主債務者なんだから,保証債務の履行であっても,債権者に対しては,主債務の承認を表示しているのだ,というのが,最高裁の判断ですね。
そして,あくまで,時効中断が生じたのは主債務であるが,「主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は,保証人に対しても,その効力を生ずる。」という民法457条1項により,連帯保証債務についても時効中断が生じていると結論付けたわけです。

なんだかパズルみたいな複雑な論点ですが,最高裁のシンプルな判決を読むと,やけにスッキリ頭に入ってくるように感じるのは気のせいでしょうか。昨夜,元最高裁調査官の講演にて,調査官や最高裁判事の仕事がいかに激務で大変であるというお話を伺ったからかもしれません。

 

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ハーグ条約実施法成立

2013-06-15

6月12日,ハーグ条約実施法が国会で成立いたしました。法律の正式名称は,「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律」といいます。ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事面に関する法律)は1983年に発効された条約ですので,日本は加盟までになんと30年かかったことになります。

このハーグ条約,具体的には何を定めている条約かというと,一言でいえば,不法な連れ去り・不法な留置がされた場合において子を常居所を有していた国に返還する要件と手続を定めているものです。

今回成立したハーグ条約実施法は,日本国のハーグ条約締結に伴い,ハーグ条約の的確な実施を確保するために定められたもので,「子をその常居所を有していた国に迅速に返還するために必要な裁判手続等を定める」ことを目的として制定されることが,法律案の提出理由として明記されています。

ハーグ条約実施法の内容を少し見てみましょう。

実施法は,子の返還,子との面会交流について,外務大臣に対する援助申請を規定するとともに,この返還に関する裁判手続をも規定しています。

子の返還についての外務大臣に対する援助申請は,①条約締結国である外国にいた子供が日本に連れ去られてしまった場合に,外国にいる親が日本からの子どもの返還を実現するための援助を求める「外国返還援助」と,逆に,②日本にいた子どもが外国に連れ去られてしまった場合に,日本にいる親が外国からの子どもの実現するための援助を求める「日本国返還援助」の二つがあります。

いずれの援助申請も,申請書は日本語又は英語で記載することが求められていますが,外務省に提出する文書なのですから,職員は語学堪能でしょうし,もっと対応言語の数は増やした方がいいと思います。

子どもとの面会交流を実現するための援助を求める面会交流援助も,返還援助と同様に,日本国面会交流援助と,外国面会交流援助の二つがあります。

今回のハーグ条約実施法成立の報道を見ると,子の強制引渡し,裁判手続の面が多く記事になっているように個人的には感じますが,実務上重要なのは,上述の外務大臣の援助がどの程度機能するかだと思います。小さな子供は極めて環境順応性が高いですから,連れ去られた先の異国の生活にも大人より早く順応します。そのため,連れ去りから返還までのスピード感が勝負という面があります。また,裁判所の決定により強制的に引渡しを行うことは,子の福祉を考えた場合,望ましい方法とは言えないことが多いかと思います。

というわけで,できれば外務省の援助により,迅速に問題が解決できる方が多くの場合望ましいのではないかと個人的には思うわけです。実施法9条は,(合意による子の返還等の促進)という見出しを付けた上で,次のように規定しています。

「外務大臣は,外国返還援助決定をした場合には,…子の返還又は申請者との面会その他の交流を申請者及び申請に係る子を監護している者の合意により実現するため,これらの者の間の協議のあっせんその他の必要な措置をとることができる。」

協議のあっせん等が具体的にどのように行われるのか,今後の運用の在り方が注目されますが,ぜひ,実効的なものを構築していってもらいたいですね。期待します。

外務大臣への援助申請によっても,日本に連れ去られた子どもの返還が実現しない場合,外国にいる親は,家庭裁判所にこの返還を命ずる決定を求める申し立てをすることになります。実施法では,東京家裁又は大阪家裁が管轄裁判所と定められています。

実施法28条は,裁判所が,原則として返還決定を出してはならない返還拒否事由を列挙しています。そのうちの一つとして,以下の規定があります。

「子の年齢及び発達の程度に照らして子の意見を考慮することが適当である場合において,子が常居所地国に返還されることを拒んでいること。」

子の意思が尊重されるわけですが,先ほど述べたように,小さな子供は環境順応性が高いですから,新しい環境にもすぐなじむ可能性があるわけで,そのあたりをも考慮して,この要件をどのように具体的に事件に適用するのか,注目されるところです。

子の返還申立事件が係属したにもかかわらず,申立てられた当事者が,子を連れてさらに海外に出国することが自由にできるとしたら,子の返還を命ずる裁判所の決定は,絵に描いた餅になってしまいます。

そこで,実施法には,出国禁止命令という制度を設け,子の返還申立事件の当事者が子を日本国外に出国させるおそれがあるときは,裁判所は出国禁止命令を出すことができ,また,パスポートを外務大臣へ提出するよう命じることもできる制度が設けられています。

また,実施法は,子の返還の強制執行についても,規定を設けています。この返還の強制執行は,間接強制前置主義をとり,間接強制を命ずる決定が確定した日から2週間を経過しないと,子の返還の代替執行の申立てはできないと規定されました。

さらに,実施法は,執行官は,監護親による子の監護を解くために必要な行為をすることができるが,それは,子が監護親と共にいる場合に限ると規定しました。実施法は,両親が国内間にいる場合の子の引渡し事件には当然適用はありませんが,子の引渡し方法,執行官の対応については,国内事件の実務にも影響を与えるかもしれませんね。

ところで,このブログを書くにあたり,法務省が国会に提出した法案等の4点セット(法律案,理由,法律案要綱,新旧対照条文)を見ていましたら,法律案要綱47ページ後ろから2行目に誤記を見つけてしまいました。私のブログは誤記だらけかもしれませんが,法案4点セットにタイポがあるのはまずいですね。あと,法律案の96条が,民訴の247条を準用していますが,これはなぜだか,私の頭では理解できませんでした。もしかしたら,誤りかもしれません。

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